The World Commentary No.96

内憂外患の欧州 -NATO首脳会議とEU欧州理事会を終えて-

NATO首脳会議が2025年6月24日・25日にハーグで、続いてEU欧州理事会(首脳会議)が26日・27日にブリュッセルで開催された。

NATO首脳会議では、加盟各国の防衛費を2035年までにGDP比5%まで引き上げることで合意した。すでに2024年に2%への引き上げに合意しており、多くの加盟国がこの水準に達しているが、まだ8カ国が未達成である。今回の合意では、「中核的な防衛支出」(上記2%に相当する支出)を3,5%に引き上げ、「防衛関連費」(重要インフラ整備や防衛産業の育成)に1,5%を当て、総額で5%達成を目指すことになった。これに対して、スペインはGDP比2.1%(3.5%ではなく)でも防衛力の基準を満たすことができるとして数値目標に難色を示し、ベルギー、スロバキアは現下の財政状況では達成は困難として柔軟な適用を求めていたが、最終的に首脳宣言は全会一致で採択された。

このことは、欧州諸国が自力で一定の防衛力を強化する方向に大きくシフトすることを意味する。その背景にロシアの現実的な脅威と米トランプ政権からの防衛負担増に向けた圧力があることは言うまでもない。欧州諸国は大西洋同盟の堅持については一致しており、欧州の安全保障体制について米欧間での新たな役割分担を模索する必要に迫られている。

他方、ウクライナのNATO加盟の可能性については、ハンガリーの強い反対もあり、今回の首脳宣言では一言も触れられず、また対ロシア非難も仲介を目指すトランプ大統領への配慮から除外された。

続いて開催されたEU欧州理事会では、対ウクライナへの継続支援と対ロシア制裁第18弾について、ハンガリーの反対で議長結論文書として採択できず、残る26カ国による合意文書に留まった。EUからの対ウクライナ支援に当面支障が生じることはないが、更なる協議が必要となった。また、ハンガリーのオルバン首相は、国内での事前調査で95%がウクライナのEU加盟に反対していると主張し、ウクライナのEU加盟交渉の第1クラスター開始について明確に反対した。しかし、同調査の投票率は30%に満たず、その投票方法にも疑念が持たれている。欧州委員会としては、ウクライナだけでなく、モルドバも含めて実質的な加盟交渉に入り、同時に西バルカン諸国の加盟交渉も促進させたい考えだが、夏休み以降の欧州理事会に協議は持ち越されることになった。

また、中東情勢について、NATO首脳会議では米国のイラン空爆に対して一定の理解が表明された。他方、EU欧州理事会では、イスラエルはEUとの経済連携枠組である連合協定に盛り込まれている人権条項に違反しているという意見が複数国から出たが、最終的にはイスラエルとパレスチナの2国家共存を目指した対話の継続が強調された。この辺りに、米欧間および欧州内部での微妙な温度差がある点には留意すべきであろう。

いずれにせよ、変容する国際秩序下において、欧州は「自立」を迫られている。だが、欧州域外からの圧力と欧州域内における対立との狭間で欧州は苦しい局面に立たされている。