The World Commentary No.85

仏バルニエ内閣の多難な門出:極右と極左の狭間で

 2024年6月の欧州議会選挙で、極右政党である国民連合(RN)がフランス国内で第1党となったことを受けて、マクロン大統領は国民議会(下院)の解散総選挙を決行した。欧州議会選挙が全国を1選挙区とする比例代表制であったのに対して、国民議会選挙は小選挙区2回投票制であることから、マクロン大統領は与党連合の逆転勝利に望みを託したと考えられる。

6月30日に第1回投票、7月7日に第2回投票が行われたが、マクロン大統領率いる「ルネッサンス」と中道右派の共和党などによる与党連合は、改選前の250議席から168議席と大きく議席を減らした。他方、RNは選挙制度と有権者の極右政党躍進を懸念する声に阻まれ、改選前の88議席から143議席と議席数は伸ばしたものの、第1党に躍り出ることは出来ず、第3勢力に留まった。その一方、「不服従のフランス」を中核とする左派連合である「新人民戦線(NFP)」が改選前の149議席から182議席となり、議会内での第1勢力の座を獲得した。

与党連合の勝利を逃したマクロン大統領は、首相指名をパリ・オリンピック明けに引き延ばした。フランス第5共和制下では、大統領はこれまで議会内第1勢力から首相を任命してきたが、マクロン大統領は、9月5日、その慣行を破り、与党連合の共和党からミッシェル・バルニエ氏を首相に指名した。バルニエ氏は、外相・農相など重要ポストを歴任し、英国のEU離脱交渉に際してはEU側の首席交渉官を務めたフランス政界の長老である。

 バルニエは9月21日にようやく組閣にこぎつけたが、議会内第1勢力となった左派連合のNFPからも、第3勢力の国民連合からも大臣は登用しなかった。唯一移民に対して強硬姿勢を示す共和党のルタイヨー氏を内相に起用して、極右勢力を押さえる姿勢を示すのみであった。

 左派連合のNFPは、10月8日、バルニエ内閣の不信任決議案を提出したが、RNが同調しなかったために否決され、当面バルニエ内閣が舵取りをすることになった。この一連の動きは、極右勢力だけでなく、極左勢力の台頭にも留意する必要があることを浮き彫りにした。今後、バルニエ内閣は、移民・難民政策はもとより、マクロンの経済政策に不満を募らせる国民の支持回復に向けてフランス経済をどのように回復させるのか、難しい舵取りが迫られだろう。