尹錫悦(ユン・ソンヨル)前大統領が今年4月4月に弾劾されたのを受けて、6月に実施された大統領選挙で李在明(イ・ジェミョン)氏が当選した。49.42%という高い得票率は、李在明大統領に対する国民の期待を反映したものであった。
李在明政権は、対日強硬外交を展開した文在寅(ムン・ジェイン)元大統領と同じ進歩派政権に属する。実際、李在明大統領は、「共に民主党」党首時代から対日批判を繰り返していた。したがって、日本側の懸念は、尹錫悦政権で好転した日韓関係の悪化にあった。しかし、李在明大統領は、大統領選挙戦を通して従来の強硬姿勢を封印し、「日本と本当に良い関係を築きたい」と話すほどの対日融和姿勢を見せた。このような路線転換は、当選確実と見られていた李在明大統領にとって、より多くの支持者を獲得することで、弾劾をめぐって分断した社会を乗り越えて「国民統合」を実現する意図があった。
首脳会談に際して行われた読売新聞とのインタビューにおいて李在明大統領は、日本は「韓国にとってとても重要な存在」であると語り、2015年の慰安婦合意や尹錫悦政権が発表した徴用工問題の第三者弁済など、歴史問題をめぐるこの間の合意を順守する意向を明らかにした。8月23日に東京で開催された日韓首脳会談は、このような流れを受けたものだった。
首脳会談後、17年ぶりに発表されたプレスリリースでは、植民地支配に対して「痛切な反省と心からのお詫び」が記された1998年の「日韓パートナシップ宣言」における日本の立場を石破総理が引き継ぐことが明記された一方で、この間の懸案事項であった歴史問題に対する直接の言及は避けられた。プレスリリースには、北朝鮮への対応や安全保障協力に加えて、経済産業分野のみならず少子高齢化や人口減少など両国が共有する問題に共に取り組んでいくことも盛り込まれた。
李在明政権が日韓協力を重視する背景には、韓国が直面する厳しい戦略環境がある。2023年12月に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、韓国を敵国と認識する「敵対的二国論」を発表して以来、南北関係の緊張は続き、中国と韓国との関係は尹錫悦政権期において断絶状態と言われるまで悪化した。同盟国である米国との関係にも不安が残る。米国との関税交渉はひと段落したものの、防衛費をはじめとする同盟再編をめぐる米韓交渉は当面の外交課題であることに変わりはない。
2025年は、日韓基本条約が締結されてから60年目にあたる。日本と韓国は、時には手を取り合って、時には疎遠になりながらも、冷戦期から冷戦崩壊そして現在の米中競争と、変化する国際情勢に立ち向かってきた。世界が荒波の最中にある今、外交という航海は一国をもってしては成功しない。遡ること江戸時代、対馬藩で対朝鮮外交を担当した儒学者雨森芳洲は、お互いに欺かず、真実をもって交わる「誠信外交」の必要性を説いた。今日の国際政治が欺瞞に満ちているからこそ、日韓は「誠信外交」を胸に刻み、ひたすらにその関係を発展していくことを期待せざるを得ない。