The World Commentary No.90

「トランプ不動産」のアメリカが始動

1ヶ月半が経過したトランプ政権を単純化すると、リベンジ意欲満々の不動産会社社長が、最終任期の78歳の大統領として荒技を使い暴走している、ということになるだろうか。説明しよう。リベンジはこれまでの自らの汚職の捜査と訴追を進めた前政権民主党を徹底的にやっつけるという意味。不動産会社社長は、既存の秩序や制度を「建物」とみなしそれを壊すために脅しを含め相手に妥協を迫る取引手法を用いるという意味。最終任期の78歳の大統領は、この4年の任期中にノーベル平和賞を獲得するためウクライナ戦争とガザ戦争を早期に終わらせ、自分の家族のためにトランプ王朝を残すという意味。荒技を使い暴走は、次から次へと過激な発言と政策を出し、メディアを翻弄させ、官僚をリストラし屈服させ政権の政策を実行させるという意味だ。

就任式直後から、トランプ大統領は前政権の予算執行を停止し、連邦公務員を退職や休職させ、官僚組織を震え上がらせている。最初の生贄は政治家の票になりにくい国際支援分野で、米国国際開発庁(USAID)の1万2千人の職員を300人に減らす手荒い計画が報道されている。

アメリカが誇る三権分立は機能不全しつつある。しつつ、というのは、トランプ政権の様々な政策の合法性について裁判所の判断が遅々としている例が多いからだ。憲法を守る司法が、行政府の暴走を抑える最後の砦なのだが、トランプ政権は裁判官の罷免もちらつかせている。

就任後ほんの1ヶ月で世界を翻弄するトランプ大統領だが、内政と外交は別に考える必要があるだろう。行政の長として国内の制度は壊しやすいが、既存の国際制度や秩序を壊すには時間も労力もかかる。関税をかけたり拠出金を停止したり防衛予算の増加を要求したりと資金で他国に圧力をかけることはできるが、戦争終結には領土分割、戦後補償や、新しい安全保障の枠組みの合意が必要だ。

注目は2026年11月の連邦議会中間選挙である。下院は与党共和党が218議席、民主党は215議席と僅差で、中間選挙では全議席が改選される。上院は共和党が53議席、民主党は無所属2を含む47議席とこれも僅差で、うち35議席が改選される。仮にアメリカ国民が壊し屋トランプに批判的になり、民主党が議会を制するとトランプ政権の政策運営にブレーキがかかる。今のトランプ政権は、古いビルを壊して新しい高層ビルを建設する勢いだが、政治と外交はそう簡単にはいかない。

ただ、トランプ大統領の破壊が、力を振りかざす大国が跋扈する弱肉強食の世界秩序への道を開くとすると、弱小国は屈服し、人間の尊厳や国際法の尊重などは後回しの世界がくる。