「非請求人(尹錫悦(ユンソンヨル)大統領)による違憲、違法行為は、国民の信任を背反するものであり、憲法守護の観点から受容することができない、重大な違法行為である。」2025 年4 月4 日、尹錫悦大統領の弾劾訴追案を審判した憲法裁判所は、大統領の罷免を宣告した。非常戒厳令が発布されてか ら、122 日目であった。大統領罷免が宣言された 瞬間、街頭では、歓声と悲鳴が同時に響き渡った。現行の韓国憲政史において、これほど暗く、 長い4か月があっただろうか。
12 月 14 日に弾劾訴追案が国会で議決された 後、韓国は大統領弾劾をめぐって、弾劾賛成派と 反対派が激しく衝突した。独裁政権と闘った民主 運動陣営のみならず、民主主義を信頼する市民に とって、尹錫悦大統領による戒厳令は明確な憲法 違反であり、違法行為であった。民主陣営の言論人らは、12 月の非常戒厳令発布を、すでに権力を握る者が、自らの権力をより拡大強化することを目的とする自主クーデター(self-coup, coup from the top)であったと断罪した。弾劾賛成派 である民主野党は、非常戒厳令を共謀したことな どを理由として、大統領代行を務める韓悳洙 (ハンドクス) 国務総理の弾劾訴追案を国会通過させるなど、政治攻勢を強めた。
対する尹錫悦(ユンソンヨル)大統領は、憲法裁判所の審判に際して直接弁論を行い、「戒厳令発布の目的は、野党による不正選挙とスパイの実態を国民に啓蒙することにあり、警告的性格であった」と詭弁を繰り返した。大統領が所属する保守与党は、大統領支持と弾劾反対を叫び続けた。保守与党の扇動に 答えるように、尹錫悦大統領を熱狂的に支持する市民は、弾劾反対のデモを続けた。弾劾反対派は過激化し、一部支持者は、1 月 19 日大統領拘束令状を発布したソウル西部地方法院(裁判所)を襲撃した。その様子は、まさに、2021 年米国連邦議会襲撃事件を彷彿とさせ、韓国社会は衝撃を受けた。支持者2名が弾劾反対を叫び、焼身自殺 した。
尹錫悦大統領が宣布した非常戒厳令は、韓国の自由民主主義を脅かす存在として野党陣営を糾弾 し、戒厳軍が発布した布告令は、国民による政治活動と言論の自由を制限した。これに対して、憲 法裁判所は、罷免宣告文において、尹政権に対する野党の政治攻勢を認めつつも、政権と野党の政治対立は「民主主義的原理に則って解消されるべき政治的問題」であると述べた。
正しく、そうなのだ。いかに様々に社会が分断されようとも、双方間での応酬が激化しようとも、それらを解消する手段が民主主義的価値観を毀損するものであってはならない。
尹錫悦は、内乱首魁(首謀者)罪で刑事訴追され、今後裁判が本格化する。尹錫悦政権は、「民主主義の守護者」を掲げる価値外交を展開し、日韓関係を正常化し、日米韓協力の強化にも寄与してきた。しかしながら、「民主主義の守護者」が 韓国民主主義を蹂躙した罪は、あまりにも重い。