The World Commentary No.84

国連未来サミット:本当に改革したいのか?

去る9月23日、第79回国連総会は「未来サミット」の成果文書「Pact for the Future(未来のための協定)」を採択した。岸田総理は22日のこのサミット演説で、「平和で自由で豊かな世界」を達成するために、法の支配の完徹など国際社会の連帯を訴えた。一方、ロシアはベラルーシとニカラグアと共に、直前までこの協定は内政干渉であると採択に反対した。さらに、安全保障理事会(安保理)常任理事国である5カ国(米・英・仏・中・露のP5)は首脳ではなく外相など下位の代表によるスピーチで対応し、「サミット」とは形容し難い残念な会合となった。

この協定はドイツとナミビアが中心となり過去18か月に渡り国連メンバー国の間で協議された成果である。持続可能な開発目標(SDGs)、平和と安全、デジタルの未来、若者と将来の世代、グローバル・ガバナンスという5分野に、AIの適切な活用をうたうグローバル・デジタル・コンパクトと将来の世代の利益を考え行動する宣言の2点が追加された。

全61ページの「協定」には56の行動指針があるが法的拘束力はなく、2015年に総会で採択されたSDGsと同列の「宣言」で、4年後の第83回総会のサミットでその進展状況を確認するとしている。

この協定の行動指針で目立つのは安保理改革の部分である。安保理は国連機関のうち唯一制裁と軍事行動を許可できる強い権限を持つ機関であり、その常任理事国だけが強制行動を止められる「拒否権」を持つ。この「拒否権」の行使が、ウクライナ紛争などの大量の犠牲者を出す国際紛争を継続させている要因であることは言うまでもない。

この行動指針の39番では、新しい安保理のメンバーとしてアフリカを優先し他の途上国からのメンバーも選出するべきであると謳っており、過去20年近く安保理常任理事国入りを主張してきた日本・ドイツ・フラジル・インドが組むいわゆるG4の努力は残念なことに完全に無視されている。

さらに、現在の常任理事国だけの特権である「拒否権」の改革については、メンバー国が「合意に至るための努力を集中的に強化する(intensify)」というのみで、全く具体性のない言い分に留まり、既存のP5が特権である拒否権をそのまま維持したい意図を露呈した内容となった。

繰り返すが、世界の平和と安全の維持という重要な責任を負う安保理が機能不全に陥る根源はP5の「拒否権」の存在であることは自明である。ウクライナ、ガザ、スーダンの数えきれない死傷者を横目で見ながら、意気込みに欠ける「協定」を発出し未来サミットが閉幕したことには、失望以外言葉が見つからない。