2024年6月6日~9日、EU加盟27カ国で欧州議会選挙が実施された。欧州議会議員は、5年任期で、各国ごとに比例代表制で選出される。720の総議席は人口比に応じて加盟国ごとに配分され、人口約8,400万人のドイツに最大の96議席、約52万と最小人口のマルタに6議席となっている。
欧州議会は、EU法案について加盟国代表により構成される理事会と共同決定権を有しているだけでなく、EU予算や欧州委員会の承認権などEUの運営に大きな影響力を持っている。しかし、今まで欧州議会は注目されることが少なく、選挙での投票率も低迷し、選挙結果がEUの政策に影響を与えることも殆どなかった。
ところが、欧州各国における2010年代以降の極右勢力の台頭に伴い、欧州議会に反EUを掲げる極右勢力が議席を伸ばしてきた。EU統合が進んだことで、エリートには恩恵があっても庶民の生活は苦しくなり、移民も増え、EUの法規制で負担が増していると批判するポピュリスト政党が市民の支持を拡大している。
まだ暫定結果ではあるが、極右グループは3割近い議席数を確保する見通しとなった。親EUの中道右派の欧州人民党が189議席、中道左派の欧州社会民主同盟が135議席で、両党合わせても324議席で過半数には届かないが、中道の欧州刷新(RE)の79議席と緑の党の53議席を加えれば456議席となるので、欧州議会での採決に支障がが出る可能性は低い。だが、多くのEU加盟国で極右政党の得票率が高く、今後の政権運営が極めて難しくなりそうである。
フランスでは、中道の「再生」が15%、極右の「国民連合」が31%となり、マクロン大統領は議会選挙を6月30日に実施する賭けに出た。ドイツでも、ショルツ首相の連立与党は惨敗し、極右の「ドイツのための選択肢」が15%と躍進した。ベルギー、オーストリア、オランダでも極右政党が議席を伸ばした。イタリアではメローニ首相率いる極右の「イタリアの同胞」が勝利した。
この選挙結果は、欧州全体の右傾化を示すものであり、極右の影響力が強まれば、気候変動対策、ウクライナ支援、環境規制といった喫緊の課題についての合意形成も難しくなりそうである。平和、自由、民主主義、法の支配、人権擁護を理念として掲げ、経済統合で繁栄を手に入れたはずのEUは新たな困難に直面している。