2021年9月下旬、初めてとなる対面でのQuad(クアッド)首脳会議が、米ホワイトハウスで開かれた。Quadは英語で「4つ」を意味する。日本、アメリカ、オーストラリア、インド4カ国の安全保障協力枠組みで、日米豪印戦略対話の通称である。
民主的価値を共有する4カ国で構成されるクアッドは、安倍晋三総理の提案により2007年に協議が始まった。しかし対中牽制色が濃いことから、中国との経済関係を深めるオーストラリアやインドが消極姿勢をとり、実質的な協力は行われてこなかった。しかし2017年11月、4カ国がマニラで10年ぶりに局長級協議を行ったことで協力は再開した。今年3月にはオンラインで初の首脳会議、その半年後に今回の対面での首脳会議が開催された。
「アジアのNATO」と形容されることもあるクアッドだが、今般採択された共同声明には、COVID-19、気候変動、新興技術に関する協力が盛り込まれ、軍事色や対中牽制色は比較的抑えられた。とはいえ、東シナ海や南シナ海におけるルールに基づく海洋秩序、中国の「一帯一路」構想を念頭に置いた新たなインフラ支援枠組みの立ち上げなど、対中意識は随所に見られる。
共同声明の興味深い点の1つは、ASEANとの協働の重要性、およびASEANの一体性への支持を強調したことである。なぜクアッド当事者ではないASEANに、しかも声明の第2段落という早い段階で言及したのだろうか。
ほとんどのASEAN諸国の最大貿易相手は中国であることに加え、同諸国はCOVID-19ワクチンの供給を中国に頼ってきた。東南アジアにおける中国の影響力は増大の一途を辿る。「インド太平洋地域の中核」(共同声明)にあるASEANをクアッド陣営に取り込む、そうした思惑がASEANへのアピールの背景にある。
しかし多くのASEAN諸国は、クアッドは米中対立を悪化させ、地域を不安定化させかねないと警戒する。たとえば、シンガポールの主要英語紙『ストレーツ・タイムズ』は社説で、クアッドが「中国を標的にしていることに疑いの余地はない」と断じている。そして日米豪印はASEANと協働するという約束を守り、そのためには友好的で平和的な国際環境を妨げるのではなく、特定の国(つまり中国)を排除しない「開かれた包括的な」環境を作らなければならないと忠告する。
クアッドを有効に機能させるためには、AS-EAN諸国を含むインド太平洋諸国の幅広い支持を取り付ける必要があろう。