「言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」と高らかに謳った国際連合憲章の理想と真反対のことが継続している。そして、国連は継続する戦争を止められない。2011年3月にシリア南部で始まった反政府運動は、アサド政権を支えるロシアと中国 vs 反アサド勢力を支える米国、英国、フランスという国連安全保障理事会(安保理)常任理事国を2分する代理戦争へ変貌し、さらにイスラム宗派の違いを背景とした中東の覇権競争がイランとサウジアラビアの介入を招いた。戦争犠牲者はとてつもなく大量である。2018年3月までのデータでは品川区の人口に匹敵する40万人が死亡し、東京23区の人口より多い1000万人が家を追われた。
国際法違反である化学兵器の使用に対しても国連は無力である。本年10月15日付英BBC放送の詳細な調査によると、シリア政府が化学兵器禁止条約に署名した2013年9月以降、最低でも106回化学兵器(塩素ガスが多用される)による攻撃がシリアで行われ、うち51回は航空機からの攻撃で、シリア政府軍によるものと強く疑われるという。安保理は化学兵器の使用に対して非難声明は発出するが、その責任の所在と罰則については一致した意見はない。先の9月29日のシリア外相による国連総会スピーチでは、シリア政府は化学兵器を使用したことはなく、米国が支援する「反政府テロリスト」が使用している、と主張した。
国連は、193のメンバー国が構成する世界的集団安全保障組織である。安全保障の役割は安保理が負うが、常任理事国(第二次世界大戦の戦勝国の主要5カ国)の一国でも反対票を投じると国連下の軍事介入も含め決議ができないルールになっている。シリア政府を支援するロシアによる拒否権の発動は、シリアの戦争の終結を遅らせている。
今回の国連総会で国連の機能停止について重く語ったのは92歳でマレーシア首相に返り咲いたマハティールだった。「70年以上前の戦争で勝った5カ国が、永遠に世界を人質にする権利があると主張することはできない。。。拒否権の発動は常任理事国1カ国によるものではなく、最低でも常任理事国2カ国と非常任理事国3ヶ国の同意の下で発動されるべきだと以前私は提案した。」老朽化し硬直した国連は、その憲章に謳った理想とはかけ離れた大国の道具である。今回の国連総会で主要国が国連の機能停止について言及しないのがその証拠である。