The World Commentary No.30

東日本大震災から10周年を迎えて

2021年3月11日は、マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震と津波、そして福島第一原子力発電所事故により生じた複合災害となった東日本大震災から10周年の節目にあたる。東日本大震災による犠牲者は震災関連死を含めて2万人を超え、いまだ増え続けている。

東日本大震災からの復興10年でどのような課題が見えてきただろうか。大津波の被害が甚大となった沿岸部では、防潮堤などのインフラ建設、高台での災害復興住宅の整備など復旧・復興工事はほぼ完成した。しかし、再建されたまちには空き地が目立つところも多い。一方、住み慣れた故郷に戻らず、あるいは戻ることができずに暮らす人々も多く、被災地の復興のみならず被災者の生活復興、コミュニティの再生などが課題として残されている。

今後30年間にマグニチュード7程度の首都直下地震が発生する確率は70%とされ、次なる巨大地震に対する備えが求められている。また気候変動の影響により台風、大雨などの気象災害が頻発、激甚化している。我々は、東日本大震災の教訓から何を学び、次の災害での被害軽減に向けた対策を進めることができるだろうか。

被災地には震災や復興の伝承館などが数多く開設されている。震災による被害や復興の経験、個人の記憶や地域の記録などを収集し保存するだけでなく、大震災から得られた教訓を次の世代や他の地域からの来訪者へ伝えようとする施設である。これら施設を訪問し、災害による被害の大きさ、命を守るための事前の備えや避難の大切さを疑似体験し、自然災害を自分ごととしてとらえ、それぞれの家庭や職場での備えを進めることが重要である。

2015年仙台市で開催された第三回国連防災世界会議では、2030年までの国際防災戦略「仙台防災枠組」が採択された。世界的にも自然災害が頻発し激甚化している中、災害による犠牲者は災害への対策に取組む余裕のない貧しい国や地域、人々などにより集中している。仙台防災枠組では、国・地方自治体のみならず、民間、市民社会、学術、さらには女性、子どもや青年、障害者、貧困層、高齢者等のより脆弱な立場にある人も巻き込み、リスク情報を活用した意思決定を通じて持続可能な開発を目指そうとしている。国際協力を通じて日本の経験や教訓を共有するとともに、世界との学び合いを通じて、個人や社会の災害対応力を高めるとともに、自然災害を乗り越える回復力を加えた災害レジリエンスを高めていくことが期待されている。