The World Commentary No.88

アメリカ大統領選挙:トランプ再選の理由

トランプ共和党候補の勝利は歴史的だ。例えば、史上最高齢の78歳、7月には文書改ざん容疑で34件の有罪判決を受け、2度下院で弾劾された人物だ。演説では、移民は強姦魔と犯罪者でアメリカ人の血を汚していると差別的発言を連発し、ユダヤ人集会では俺が負けたらお前達のせいだと脅迫し、性転換手術を学校がするようになったと嘘を連発した。しかし、大統領選では快勝し、共和党が上院は制し、下院も共和党が優勢だ(11月11日時点)。共和党の地盤州のみならず、民主党の強固な地盤ニューヨーク州とカリフォルニア州でも共和党が票を伸ばした。この快勝には2つの理由がある。第1は経済、第2はトランプである。

まず経済。有権者の党指向をざっくりいうと、4割は共和党の岩盤、4割は民主党の岩盤で動かず、残りの2割が約半分ずつ共和と民主に分かれ拮抗が続き、終盤でこの2割の一部がどちらに振れるかの勝負となった。

残りの2割のうちこれまで民主党を支持したが共和党に投票した有権者の判断は経済が理由だったようだ。物価高で生活がきつい、トランプの発言は好きではないが民主党では先が見えない、という意見だ。英BBCの出口調査では、物価高の影響を受けやすい年収6万ドル以下の層が大きく共和党へ流れ、余裕のある年収10万ドル以上の層はハリスへ流れた。

加えて、2020年大統領選でバイデン民主党を支えたヒスパニックはバイデン得票数より2割強、そして黒人層ですら1割強が今回は共和党に流れた。

ハリス候補が期待した女性票も振るわなかった。女性の54%はハリスを支持したが、それは57%のバイデン支持に届かなかった。

第2の理由はトランプである。2016年からの1期目は度重なるスキャンダルを蹴散らし、下野した過去4年間も既存エリートとメディアを攻撃する過激な発言と90以上の容疑を抱える裁判沙汰で常にメディアの中心にいる常識破りの役者となった。選挙翌日のパロディ新聞The Onionは”America Defeats America”という見出しで、建国248年経ってついにアメリカ人はアメリカが嫌になったと、皮肉った。

最後に、トランプ大統領のレガシーを想像してみたい。自分中心主義のトランプ的に想像すると、建国250周年式典に合わせウクライナ戦争とガザ紛争を終結させた功績でノーベル平和賞を取る(ライバルのオバマ元大統領は受賞している)、そして愛する故郷ニューヨークのケネディー空港をトランプ空港に改名することが考えられる。非常識に聞こえるが、実現してもおかしくない悪夢だ。