The World Commentary No.44

ウクライナ危機:対ロシア配慮に葛藤する中国

 2022年2月4日から20日までの17日間、「平和の祭典」・北京冬季オリンピックが開催された。2008年の北京夏季大会と同様に、国威発揚の絶好の機会と考える習近平指導部であったが、人権状況等を理由に「外交ボイコット」が相次ぎ、結局、23カ国の首脳が開会式に参加するにとどまった。ここでホスト国・中国のメンツを立てたのが、大国・ロシアのプーチン大統領による開会式参加であり、共同声明を含めて、中露の「蜜月」ぶりが改めて確認された。

 開会式当日、式典の前に行われた中露首脳会談および晩餐会の席で、率直な意見交換がなされたと見られる。習国家主席は秋に開催される共産党全国代表大会で三期目を目指し、オリンピックの成功を最優先課題として臨んだ。一方、プーチン大統領は石油会社トップら企業経営者を引き連れ、中国に経済面での連携を強く要請した。中国は天然ガスと石油をロシアから大量購入することに合意した。これに関連して、プーチン大統領はウクライナに軍事侵攻する可能性について、習国家主席にこの場で伝えていたとのメディア報道がある。通告が事実であるならば、それが限定的な侵攻か全面的な侵攻であったのか、今後、解明を要するであろう。

 オリンピックが閉会した翌日21日、プーチン大統領はロシア軍のウクライナ東部への派遣を決めた。その後、戦線は各都市に拡大し、地上部隊が首都のキエフに迫り、全面的な侵攻となった。この間、中国は事態を静観し、中国籍の住民約6千人の国外退去も後手に回り、停戦を仲介する動きも見せていない。外交関係者の発言や行動には、葛藤する中国の姿が窺われた。

 2月19日夜、王毅外相は「各国の主権、独立および領土的一体性は尊重され、維持されてしかるべきだ」「ウクライナも例外ではない」と発言した。国連安全保障理事会と総会緊急特別会合で、中国はロシア非難決議に反対せず棄権を選択した。要するに、ロシアを非難していないが、真意は侵攻反対にあるとも解釈できる。

 曖昧な姿勢の淵源は主に中国のロシア配慮にある。米国との対抗上、その戦略的な重要性は圧倒的である。中国がNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大反対でロシアに同調するのは、アジア太平洋地域で進む中国包囲網の形成と関係する。安定した政治環境で三期目を望む習国家主席が、ロシアへの支援、「最大の外的脅威」米国との協議をどう進めるか見極めてみたい。