The World Commentary No.41

ミャンマーのクーデターから一年: 分裂する民主勢力と泥沼化する内戦

 民主勢力のリーダー、アウンサン・スーチー国家顧問は、自らの政権の2期目の準備をしていた矢先の昨年2月に国軍によるクーデターで拘束された。1990年以降総選挙をする度に勝ち続けたスーチー氏の政治生命を断つために国軍はクーデターを決行し、現在非公開裁判でスーチー氏に有罪判決を連発している。今年1月末までに、既に合計6年の実刑判決が言い渡された。今後、数ある容疑で有罪判決が出ればスーチー氏の刑期の合計は100年になると報道されており、76歳のスーチー氏は、政治生命どころか人生の最後を刑務所で迎えることになりかねない。

この1年の国軍の弾圧で1500名以上の国民が殺害され、拘束者は1万人を超えると英BBCは報道する。恐怖に怯える大多数の国民がいる一方、民主勢力は「国民統一政府」を通じて国軍に抵抗するが、その実態はネット上の議論の場である。スーチー氏はクーデターの翌日に国民に非暴力抵抗運動を呼びかけたが、運動の参加者が国軍により容赦無く射殺され続ける状況に対し若者達は武装闘争を主張した。急進的な若者の離反を恐れた国民統一政府は、昨年5月に若者を中心に「国民防衛隊」の結成を認めた。国民防衛隊の若者達は、山岳地帯から反政府運動を長年継続してきた少数民族武装集団と合流し国軍に対してゲリラ作戦を続けているが、その装備は国軍にとても及ばない。

泥沼化する内戦への対応の一方で、利益判断も交錯する。国軍への圧力を求める国際世論に押され欧米豪石油各社はミャンマーから撤収すると今年1月に表明したが、この撤収は中国、シンガポール、タイの石油会社にとっては商売のチャンスだ。ミャンマーの石油・ガス・木材・貴金属と翡翠(ひすい)は巨額の利益を生み出す資源だ。ミャンマーの山岳地帯で密かに生産・輸出されるヘロインとメタンフェタミン系合成麻薬の収益も忘れてはいけない。

 ミャンマーで巨額の利益を上げる勢力にとっては今回のクーデターは迷惑な事件に違いない。しかし、ミャンマーが民主的な国として経済発展して企業がますます利益を上げ、その利益がミャンマー国民の給与を上げ経済の好循環が進む理想に少しでも向かう方策を考えないといけない。だが、経済の好循環が無くとも利益を上げられる国軍にはその気はない。