The World Commentary No.26

核兵器の廃絶に向けて:核兵器禁止条約の発効

核兵器禁止条約は、発効の要件である50カ国の批准を得て、1月22日に発効する運びとなりました。同条約は、核兵器の使用が破壊的で非人道的な結末をもたらすことを憂慮し、その使用の防止を保証する唯一の方法として、核兵器の完全な廃絶を掲げています。
国際社会におけるこれまでの核軍縮の多数国間枠組は、核の拡散防止や核実験の制限を中心としてきました。前者の例としては核不拡散条約が、後者の例としては部分的核実験禁止条約、包括的核実験禁止条約(2021年1月現在未発効)が挙げられます。核兵器禁止条約は、既に核兵器を保有している国にその全面的な廃棄を義務づける点で、画期的な条約であるといえます。
しかしながら、核兵器禁止条約の発効により直ちに核兵器の廃絶が実現するかというと、残念ながらそう簡単ではありません。なぜなら、条約は自らの意思で締約国となった国しか拘束することが出来ないという、根本的な限界があるためです。核兵器禁止条約には米英仏中ロの核保有5大国が参加しておらず、これらの国家は同条約における核廃棄の義務を負いません。
核兵器禁止条約の妥当性自体に疑問を呈する国もあります。その一つが、唯一の戦争被爆国日本です。外務省のHPには、「核兵器禁止条約と日本政府の考え」として大要次のような見解が表明されています。北朝鮮のように核兵器の使用をほのめかす国家に対しては核兵器の保有によって対抗する他はなく、日本としては日米同盟の下で核兵器を保有する米国の抑止力を維持することで国民の生命・財産を守る必要があり、こうした安全保障に関する現実的視点を欠いた核兵器禁止条約は、核兵器国及び核の脅威に晒されている非核兵器国と、同条約を支持する国の間に分断をもたらしているというのです。その上で、日本政府としては現実的かつ実践的な核軍縮の取組を推進する考えだとしています。
核軍縮の課題は、核を保有する国やその抑止力に頼む国を含んだ全ての国が、核兵器廃絶という究極の目標を真に切実なものとして共有することと、その目標を達成するための具体的な道筋の賢明な選択の両方を含んでいるように思います。核兵器禁止条約の是非や今後の方向性を検討する上では、この両方の視点が求められるのではないでしょうか。