「21世紀は過去とさほど変わらない。もし国家が平和を希求するなら、まだ兵器を使用しなければならない。狂気だ。だが、国際法や協力ではなく、兵器が現実だ。どの国が生き残るかは兵器が決めるのだ」。9月24日の国連一般討論演説でウクライナのゼレンスキー大統領はこう発言した。2022年2月からのロシアによる侵攻が着々と進み、国土の2割ほどを失ったウクライナの本音だ。
爆撃と飢餓で多くの人命が失われるガザ戦争の出口も見えない。9月17日、国連人権理事会の調査委員会は、イスラエルがガザ地区で集団殺害(ジェノサイドでは)を進めていると発表。この報告内容を拒否したイスラエルは、少なくともまだ100万人のパレスチナ人が居住するガザ地区の軍事制圧に乗り出した。ガザ地区制圧の後は西岸だろう。
ウクライナ戦争もガザ戦争に対しても世界の平和と安全を確保する役割を負う国連安保理は常任理事国の拒否権発動で拘束力のある決議ができない(今年の総会一般討論演説で日本を含む多くの国が拒否権の凍結や常任理事国数の増加など安保理改革を訴えた)。同時に、世界各国は国防予算を増額しており、ストックホルム平和研究所は、2024年だけで世界の国防予算は史上最高の2兆7千億ドル(約400兆円)に達し2025年にはこの記録を更新するだろうと予測している。
9月24日に人工知能(AI)の責任ある活用(軍事転用含む)を議論した安保理会議でも各国の足並みは揃わない。各国はAIの危険性を理解しつつも、AIを規制する世界共通の基準作りには懐疑的だ。AI開発で世界をリードする米国は世界基準作りには猛反対だ。国連は、日進月歩のAI開発と活用のスピードに見合った世界基準が作れるのだろうか。
2015年のパリ協定を国際協力と連携の模範と誇った温暖化対策もうまくいかない。温暖化対策は各国の産業、労働政策はもちろん、解氷に伴う資源開発と安全保障環境の変化に直結しているからだ。そうこうしているうちに地球の気温は毎年最高温度を更新している。9月24日の国連気候変動サミットには120カ国が参加したが肝心の米国は欠席し、日本も不在だった。今年11月にブラジルで開催予定の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)は、またしてもスピーチ・パーティーで終わるのだろうか。
戦争、温暖化、AIなどリスクが襲いかかる世界で国連は80周年を迎えた。国連好きは、最低でも国連は各国が集まれる場を提供している、と前向きだろうが、集まってどうなるのかが大事と言い返すこともできる。
もちろん80年の国連の足跡には誇れる例が多い。特に経済社会分野、例えば国際民間航空機関(ICAO)の基準がなければ安全な航空機の運行はできないし、世界保健機関(WHO)や国際労働機関(ILO)の基準は安全な生活のために不可欠だ。課題は、人権や安全保障という政治分野で国益が衝突する場合である。国益の妥協点を見つけるのは外交だが、武力が外交を押しのける21世紀の到来に国連はどう向き合うのか。