The World Commentary No.86

日本被団協がノーベル平和賞受賞

1956年に結成された日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が、10月11日についにノーベル平和賞を受賞した。当初は被爆者への国家補償を重点に活動した日本被団協は世界的な核兵器禁止を目指した運動を今まで続け、“Hibakusha”という日本語を世界共通語にした団体である。もちろん被爆者への国家補償へ向けた法廷闘争は現在も続いている。

これまで何度もノーベル平和賞に推挙されてきた日本被団協がこのタイミングで受賞した背景には、核兵器保有国のロシアとイスラエルが直接参加する戦争が継続していること、核による示威や威嚇を繰り返す北朝鮮などの影響が増大していること、世界的な核軍縮への機運(核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議など)の低迷等で、世界が核戦争の瀬戸際に追い込まれているという危機感がある。映画『オッペンハイマー』のヒットの影響もあるだろう。

一方、この核戦争の危機を乗り越えようという世界的な運動もある。冷戦の終結を受けて、大量破壊兵器としての核兵器廃絶を目指す機運が世界的に高まり、日本被団協は被爆者自身の経験と意見を英語で盛んに発信し核兵器廃絶運動を支えてきた。その世界的な運動は2017年の核兵器禁止条約の採択にたどり着いた(同条約は2021年に発効)。核兵器禁止条約採択をリードしたのは国際NGOの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)で、これは2017年にノーベル平和賞を受賞している。

日本政府は核兵器禁止条約を批准していない。その当初の理由は米国の核の抑止力が日本の安

全保障に重要であるため、核兵器禁止条約ではその「安全保障の観点が踏まえられていない」(外務省『外交青書2018』)というものだった。ところが今では、核兵器のない世界のために「米国との信頼関係を基礎としつつ、現実的かつ実践的な取り組みを進めていく」と、同条約の存在を受け入れた政府見解となった(『外交青書2024』)。

ストックホルム国際平和研究所の推定では、核弾頭数はアメリカとロシアでそれぞれ約7000発、隣の中国と北朝鮮はそれぞれ約270発と10~20発、インドとパキスタンがそれぞれ約130発、イスラエルが約80発、英国は約200発、フランスは約300発と、世界を何度も破壊できるあまりにも多い弾頭数だ。

課題は日本被団協が主張する被爆者の実体験を次の世代にどう繋げていくかだ。ノーベル賞委員会は、被爆者の思いが新しい世代へ引き継がれる期待を込めて日本被団協を選んだ。来年で原爆投下から80年という節目に、日本政府は核兵器禁止条約を批准して被爆者の実体験を国家として風化させない意思を世界に示せないか?