The World Commentary No.42

ウクライナ危機:情報戦の国連パフォーマンス

2月24日、ニューヨークの国連安全保障理事会緊急会合中にロシア軍のウクライナ侵攻が始まった。ウクライナの国連常駐代表キスリツァ大使は「国連は病にかかっている。それはクレムリン(注:ロシア大統領府)によって拡散されたウイルスによる感染だ」と、プーチン大統領による偽情報の拡散をウイルスの拡散にたとえ国際社会に警鐘を鳴らした。ロシアではなく、プーチン大統領が標的なのである。

国連の支柱である「世界の平和と安全の維持」を統括する安保理で、その15カ国メンバーのうち5カ国(米国、中国、ロシア、フランス、イギリス、 Permanent Five=P5と呼ばれる)は常任理事国として法的拘束力のある決議の拒否権を持ち、核兵器保有国である。他の10カ国は2年任期の「腰掛け」組で、拒否権を持たない。

 25日の安保理会合では、米国とアルバニアの共同提案でウクライナ侵攻をしたロシアを強く非難する決議案が提出された。日本を含む82カ国の賛同を得た決議案であったがロシアによる拒否権発動で否決された。P5の米、仏、英は賛成し、中国は棄権した。

安保理決議案が否決されることは承知済みの今回のパフォーマンスはプーチン大統領を追い詰める効果を発揮している。国際法に違反してプーチン大統領が軍を使い弱い者(ウクライナ)いじめをしているという各国スピーチが国連の公式HPで生放送され、それは既に50万回以上再生された。同じ映像を欧米各国メディアは

YouTubeで世界に発信しそれぞれのサイトではすでに60万回以上の再生回数を記録した。同時に、ロシアを含む世界中の主要都市で反プーチンとウクライナ支援のデモが発生している。

国連舞台のパフォーマンスは続く。28日から始まった国連総会緊急会合で、ロシアによる軍事侵攻の停止と人道支援の要請の決議案が討論されている。国連総会決議は法的拘束力を持たないが、このパフォーマンスを通じ193の国連メンバー国の態度を明らかにし、反プーチン包囲網を強化する目論みがある。

プーチン大統領を追い詰めるため情報戦が激しく展開されている。ロシア政府もウクライナ国民の士気を挫くビデオを大量に流している。安保理会議中に各国大使が携帯電話を片手に飛び交うニュースを引用して非難の応酬を展開する姿は情報戦の激しさを物語る。現状では、国連舞台を利用した国際世論の流れの主流は反プーチン情報だ。「窮鼠猫を噛む」というが、追い詰められるプーチン大統領の次の手が気になる。