2021年4月16日に日米首脳会談が開催された。この会談において、菅総理とバイデン大統領は、中国による「自由で開かれたルールに基づく秩序」への挑戦に日米両国が共同で対抗していくことを確認した。会談後に公表された共同声明では、中国が強く反発することを承知の上で、「台湾海峡の平和と安定」が日米両国にとって重要であることを明記し、両岸関係(中台関係)の「平和的解決を促す」という文言も盛り込まれた。共同声明での台湾への言及は、日中国交正常化以前の1969年以来、実に52年ぶりのことである。
この共同声明では、核兵器を含むあらゆる手段を用いてアメリカが日本防衛に関与することや、中国が領有権を主張する沖縄県の尖閣諸島が日米安全保障条約第5条(アメリカの日本防衛義務)の適用範囲内だということも改めて確認された。防衛力強化に向けた日本の強い決意も文面に盛り込まれている。米中両大国の狭間で態度を明確にできない国も少なくないなか、中国を牽制し、中国による現状変更の試みを抑止するため、日本は一歩踏み込んでアメリカと連携する意思を示した形となる。
しかしながら、日米が団結を一層強めたとしても、強い中国が東アジア地域を不安定化する「中国問題」を解決することは容易なことではない。東アジアに展開する米軍の戦力は、かつてのように人民解放軍に対し圧倒的優位を誇っているわけではなく、台湾海峡周辺に限定すれば、すでに軍事バランスが中国優位に傾いているともいわれている。1996年の台湾海峡危機の時とは状況が大
きく異なっており、しかも、中国の軍事力は増強の一途をたどる見込みである。
したがって日本は、情勢が今後さらに厳しくなることを想定しつつ、「中国による台湾侵攻」という最悪の有事シナリオのことも検討しなければならない。仮に中国が台湾に侵攻し、アメリカが台湾防衛に関わる事態になれば、在日米軍も出動することになる。米中間に軍事衝突が生じ、それが拡大した場合、アメリカは日本にも全面的な協力を求めることになろう。日本への直接的な攻撃がなくても、日本と密接な関係にある国が攻撃され、日本の存立が危うくなる「存立危機事態」には、日本は集団的自衛権を行使できる。一方、戦争への関与を回避するため、アメリカに協力しないという判断をすれば、日米同盟が破綻する可能性は高い。
アメリカへの「ただ乗り」が困難な状況になるなかで、「自由で開かれたルールに基づく秩序」を防衛する側に立つことの意味を改めて考える必要がある。