1月20日、バイデン大統領は「政治的過激主義、白人至上主義、国内テロに、我々は対峙し打倒する」と、その就任演説で国内テロに言及した。著者は20年以上テロ問題を研究してきたが、どのテロ事件でもテロを生む世界観がある。ナチス、日本赤軍、オウム真理教、アル・カイダ、イスラム国、そして今回アメリカ連邦議会を襲撃したテロ事件(写真)も、である。今回の事件の世界観とは、トランプ前大統領が主張してきた「大統領選が社会主義者=民主党によって盗まれた」という嘘を醸し出した、真実(=得票数)を否定する世界観である。連邦捜査局(FBI)は、この事件に、国内テロリスト・グループが参加したとみており、1月27日には国土安全保障省が国内テロ警戒の注意喚起を発出した[*]。
振り返ると、昨年11月大統領選挙の1ヶ月前のテロ事件が、今回の連邦議会襲撃事件の前兆だった。10月8日にFBIは、ウィトマー・ミシガン州知事誘拐未遂容疑をテロ事件と断定し13名を逮捕したと発表した。州検察によると、白人至上主義者グループが、ウィトマー知事を誘拐し、州議会を占拠し、州議員を議会内で殺害する計画をしていたという。今回の連邦議会襲撃テロでもペンス副大統領始め連邦議会議員の殺害の計画が明らかになっている。嘘に塗れたトランプ劇場をここまで現実化したアメリカ社会の病理を問題と見る分析は間違っていな
いが、その病理の治療は直接のテロ対策ではない。テロ対策は刑法に照らし、テロリズムを犯罪行為として定義し、治安当局にテロ防止の役割を与える法制定がまずは必要だ。アメリカには外国テロを防止する法はあるが、これまで国内テロの防止の法律はなかった。
アメリカ下院は、国内テロ対策として「国内テロリズム防止法」を昨年末に可決し上院に送ったが、トランプ政権下の上院はこの法案の審議すら始めなかった。民主党と共和党が同数となった新しい上院ではハリス副大統領が上院議長となるため、バイデン政権の意向が反映されるだろう。よってこの「国内テロリズム防止法」は新しい上院で可決され成立する可能性が高い。暴力で政府転覆を目論む国内テロからアメリカは守られなければならない。新法がその目的を果たせるか、注目していきたい。
[*] F B Iは国内テロを「米国法または州法に違反し人命を脅かす行為で、その目的は(a)文民を脅し、(b)脅迫により政策を変更させ、(c)誘拐、暗殺、破壊行為で政府の行為を変更させようとするもの、と定義する。