2020年のアメリカ合衆国大統領選挙は様々な「異例」が発生した選挙として記憶されることになろう。2020年1月から11月まで及ぶ長い選挙戦は、そのほとんどを新型コロナウィルス感染懸念の状況下で行うことになった。その結果、州予備選や全国党大会のほとんどはオンラインで行われ、対面での小規模集会や家庭訪問は限定されたものになった。また通常では二期目を狙う現職大統領の信任投票という雰囲気になるものだが、今回はそうではなかった。さらに、投票率が66.4%(速報値)となり、通常の大統領選挙よりも10ポイント前後上昇した。特に激戦州と呼ばれる州では、投票率が軒並み70%を超え、ネット上では不正投票疑惑がささやかれた。加えて、本稿執筆段階ではトランプ大統領はバイデン氏の勝利を認めておらず、政権移行がスムーズになされるかどうかが懸念される事態となっている。
大統領選挙は制度的に州が重要な位置を占める。大統領は国民の直接投票ではなく、大統領選挙人投票によって選ばれるからだ。大統領選挙人は、州の人口比で割り当てられており、その州で多数を取った候補が全ての大統領選挙人票を獲得する。この制度では必然的に、「次の大統領が自州にどのような利益をもたらすか」が焦点となる。つまり、その州に雇用をもたらすかどうかや、その州に即した道徳的傾向をもっているかどうかが、外交や国際関係よりも重視される。覇権国家でありながら、候補者が国際
関係でどのようなビジョンを持っているのかを問う制度にはなっていないのだ。
この事実は既存制度が必然的にもたらす効果であり、「異例」でもなんでもない。しかし、アメリカ社会の分極化と、「政策」よりも「キャラクター」「陰謀論」がクローズアップされた今回の選挙では、その制度の問題点が浮かび上がってきた。アメリカ国民が、憲法修正が必要な州単位での大統領選を早々に変えるとは思えないが、アメリカの外交に影響を受ける外国人にとってはなんとも居心地の悪い制度である。