The World Commentary No.14

建国70周年、中国というアポリア

アポリア(aporia)とは、ギリシア語で解決の方途が見いだせないことから生じる困難を意味する。一般には、解決がつかない難問をさす。近年、急速に台頭し、膨張を続ける中国をどのように理解するかは、日本や周辺諸国のみならず世界にとって一つのアポリアとみなすことができる。

とりわけ、日本や欧米諸国の多くが頭を悩ませるのは、中国という巨大国家の先行きの不透明感であろう。いま、習近平政権の下で、中国本土ではメディアや教育現場で言論統制が徹底され、香港では民主化を求める学生・市民のデモへの圧力が強化されている。今回、建国70周年でも過去最大規模の軍事パレードが実施され、米国も保有していない迎撃困難な「極超音速」の最新兵器も披露された。民主化への道を歩むことなく、軍事・経済の両面で強国化を進める中国に対する絶望感に近い思いが、日本においても次第に共有され始めているのではないだろうか。

 中華人民共和国は、今から70年前の1949年10月1日に成立した。当時、軍の装備も人員も圧倒的に優勢であった蒋介石率いる国民党の軍隊を、毛沢東という農民出身の共産党指導者が人口の圧倒的多数を占める農民の支持を獲得する戦略によって打ち破り、新中国は誕生した。

建国後、国家目標を「社会主義的近代化」に定め、毛沢東は前者の「社会主義(平等の追求)」に力点を置いた政策を進めたが、主導した大躍進運動は約4000万人といわれる「不正常な死」=餓死をもたらした。次に、毛が発動した文化大革

 

命でも、被害者1億人ともいわれる人的・物的両面での膨大な負の遺産が後世に残された。

後継の最高指導者となった鄧小平は、国家目標の内、後者の「近代化(豊かさの追求)」を重視し、経済改革で卓越した手腕を発揮した。同時に、政治改革でも、共産党の権限を相対化する、党と政府の権限分離を試みた。しかし、1989年の「天安門事件」(学生・市民の民主化要求運動への軍による武力鎮圧)やソ連・東欧での社会主義体制の劇的崩壊から、鄧は再び政治面で一党支配体制を強化して経済発展に専心する方針を決断した。結果的に、国民の生活水準は飛躍的に向上し、2010年には日本を抜き世界第二位の経済大国の地位に躍り出たのである。

 現代中国70年の歩みは、紆余曲折をたどった複雑な道程であり、現状では悲観的な材料にも事欠かない。一方で、隣国を固定的に眺め過ぎてもならない。かつて画期的な政治改革の試みがなされ、いま国民の対日好感度は50%に迫る。難問へのヒントはまだどこかに隠れている。