2019年5月23日~26日に実施されたEUの欧州議会選挙の結果について振り返っておこう。
欧州議会とは、EUの民主的正統性を担保している機関であり、理事会との共同立法権、予算権、欧州委員会の承認権、EUの対外条約に対する同意権など広範な権限を有している。しかしながら、欧州議会の有する権限は限定的であり、選挙によるEU執行部の交代や政策変更も期待できないため、「2流の選挙」と言われ、投票率も40%台前半に落ち込んでいた。今回は、英国のEU離脱問題(Brexit)や反EUを掲げるポピュリズム政党のここ数年の躍進もあり、有権者の関心が高まった結果、投票率は約51%にまで回復した。
選挙結果からまず見て取れるのは、これまで欧州議会の過半数を占めてきた中道右派の欧州人民党(EPP、キリスト教民主党系)と中道左派の社会民主進歩同盟(S&D、社会民主党系)の2大会派が、それぞれ216議席から179議席、185議席から153議席と退潮し、両派を合わせても、総数751議席の過半数に到達しなかったことである。これは、有権者が既存政党離れを起こしている各国の国内選挙結果とも通じるものがあり、EU政界にも再編の波が訪れていることを示唆していると言えよう。
今回議席数を大幅に増やしたのは、欧州人民民主同盟(リベラル系)と緑の党・欧州自由貿易連合で、それぞれ106議席、74議席となった。これら2会派は、基本的には親EU会派であるから、先のEPPおよびS&Dと合わせれば、親EU勢力で総議席数の過半数は優に超える数字となっている。従って、選挙前に懸念されたように親EU勢力が過半数割れを起こして、EUの運営に支障がでるような事態は回避された。とは言え、各会派は政策ごとにスタンスも異なるため、親EU勢力が如何に結束できるかどうかが今後の鍵となろう。
他方、躍進が密かに恐れられていた反EUのポピュリスト諸政党は、前回2014年の選挙と比較して、それほど議席数は伸ばせず、全議席数の30%と微増に終わっている。フランスの「国民連合」やイタリアの「同盟」がそれぞれの国で第1党になるなど、依然として極右政党の勢力が強い国も見られたが、ドイツでは極右の「ドイツのための選択肢」が第4党に留まるなど、選挙前に懸念されていたようなEU全域での極右の地滑り的な勝利とはならなかった。英国でEU離脱党が第1党になったのは、この2年以上にわたる同国のEU離脱問題が影響していると単純に考えられる。
これまでの慣例では、欧州議会選挙で第1党となった政党グループが推薦する候補者が欧州委員長に推挙されることになっているが、EPPが衰退したことで、委員長選びは混沌としてきそうである。また、リベラル派や緑の党が議席数を伸ばしたことが、今後の欧州議会の動向にどのような影響を及ぼすのか注目される。