The World Commentary No.110

BRICSと国連―国際秩序をめぐる新たな主戦場

9月12日から13日にBRICSサミットがインドで開催された。主催したモディ首相はBRICSを「問題解決のための平等なシステム」と表現した。中国の習近平国家主席は「平等で秩序ある」BRICSと評した。ロシアのプーチン大統領は、BRICS は「最強で真正な多国間主義(multilateralism)」と持ち上げた。

BRICSはBrazil, Russia, India, China, South Africaの頭文字をとった新興国のグループで、ユーラシア、アフリカ、南アメリカ大陸に散在する11カ国のメンバー国と、10ヵ国のパートナー国で構成される。そもそも21世紀の新たな投資先として宣伝されたBRICSは2025年現在世界人口の約半分を占める巨大市場となり、国内総生産(購買力平価)シェアでは世界の4割以上を占めるグループに成長した。

一方、BRICSは政治体制も産業構造も価値観も人種や宗教も違う国々で構成される。さらに人口に見合った経済発展と雇用が確保されていないもの事実だ。そのため、BRICSの共通目標は経済成長と開発だ。

今回のサミットの成果文書(140段落、45ページ)をひもといてみる。単独行動主義(unilateralism)を批判する文章は9あり、そこでは一方的な関税を課すことを非難し、国連安保理の賛成のない軍事行動に深く懸念を表明している。

この成果文書に、平等な世界を達成するためには多国間主義が必要であることを主張する文章は26ある。例えば、BRICSはこれまでの先進国中心の貿易と投資体制や世界の不平等を是正し、持続可能な世界を目指すためには国連憲章の下で世界は力を合わせるべきだ、という。平等な世界作りのための多国間主義は、保健、教育、環境、貿易と投資、安全保障、技術、スポーツなど様々な分野でBRICS各国が協力する柱と位置付けられる。

しかし、BRICSはアメリカを主とする先進国と決別しようとしているわけではない。例えば、単独行動主義を非難する文章は多く、アメリカやトランプ政権を想定した表現だが、名指しはしない。ただ並行して、アメリカという世界の政治・経済の中心から距離を置こうという努力は静かに進んでいるようだ。例えば、脱米ドルの努力(BRICS Pay決済インフラの構築、新開発銀行による融資、デジタル通貨の設置など)は進む。とは言うものの、世界貿易の決済には米ドルが広く使われる現実もある。

さて、来年のBRICS開催国は中国だ。大国中国にとってBRICSはその覇権を利用できる舞台のひとつだが、もっとも重要な舞台はロシアと並び自らが安保理常任理事国である国連だろう。事実、この成果文書では、安保理の新メンバーを目指すブラジルとインドを支持するとし、この両国と協調して安保理改革を進めてきた日本とドイツを牽制する。

ということは、来年のBRICSサミットでは、中国とロシアが協力しながらBRICSからの安保理の新メンバー追加をちらつかせ、先進国の影響力を少しでも切り崩す動きが加速化するだろう。日本は、ますます覇権を誇示する隣国ロシアと中国と、友好な関係を築けるのだろうか?