The World Commentary No.8

過激化したインドネシアの偽情報選挙の結末

民主主義制度のうち、選挙は誰が国家権力を掌握するか決める正当なプロセスだ。選挙の勝者がその権力を掌握し、敗者は次の選挙の勝利のために準備する。去る4月17日には、世界最大数のイスラム教徒が構成するインドネシア共和国で大統領&議会ダブル選挙が行われ、現職の通称「ジョコウィ」ジョコ・ウィドド大統領が10%リードで再選された。

ところが、敗者プラボウォ候補は選挙不正を理由に敗北宣言を拒否。イスラム過激団体を含む支持者たちに選挙不正の報告を呼びかけ、選挙の正当性を裁判で争う宣言をした。一方選挙管理委員会と海外からの選挙監視団は、選挙は公正であったと発表しており、日本政府もジョコウィ大統領の再選に安倍総理大臣発の祝辞を発出し、選挙の公正さを認めている。

負けを認めないプラボウォ候補の呼びかけに応え、5月22日に首都ジャカルタでは大規模な抗議デモが行われ、暴徒化した群衆と機動隊が衝突し、6名が死亡する惨事となった。暴徒の中にはサングラスとマスクで顔を隠すものも多く、駐車中の自家用車、バス、近隣の住宅に次々に放火した輩がいたところを見ると、混乱を巻き起こすことを準備したグループがいたようだ。

布、一方ジョコウィ陣営は、プラボウォ候補は厳格なイスラム法の施行を目論むと偽情報で対抗した。ターゲットは有権者最大数のイスラム教徒だった。イスラム教徒の不安を煽り、恐怖を流布し、感情に訴えて票の獲得だけを狙った大規模なネットの悪用だった。

選挙は、国家権力掌握のための正当なプロセスだが、偽情報を流布して大衆動員をする手法は常に暴力を誘発する。死者を出すまで過激化したインドネシアの政治環境は、この暴力を排除できるのだろうか。ネット社会には、発信者から受信者の間に情報の信頼度を確認する責任者はいない。ネットを悪用する嘘つきは、早く、安く、広く偽情報を拡散し社会を扇動する。嘘つきはどの時代でも厄介な存在であるが、誰が嘘つきかを早く、安く、広く見極める高質の民度がないと公正な選挙を維持することが難しい時代である。