The World Commentary No.7

混迷する朝鮮半島情勢

近年、北朝鮮をめぐる朝鮮半島情勢は急速に変化している。2016年1月に実施された4回目の核実験以降、北朝鮮による軍事挑発はとどまるところを知らず、2017年夏頃には、アメリカによる対北先制攻撃がまことしやかに語られるようになった。緊迫した状況にあって、朝鮮半島情勢が大きく変化するのは、2018年6月シンガポールにて実施された第1回米朝首脳会談であった。第1回米朝首脳会談において、アメリカは北朝鮮に対して「安全の保証を与え」、その対価として北朝鮮は、朝鮮半島の完全なる非核化を実現することについての「揺るぎない決意」を表明したのであった。

 しかし、何を持って「非核化」とするのか、米朝間でコンセンサスが形成されなかったという現実が、今年2月ハノイで実施された第2回米朝首脳会談が決裂した要因の1つであったと言えよう。アメリカが主張する「朝鮮半島の非核化」は北朝鮮の非核化であり、一方で北朝鮮にとっては、アメリカを含めた非核化であった。アメリカ側は、北朝鮮が非核化した暁には対北

制裁を解除または緩和するとし、北朝鮮が行うべき非核化はFFVD(最終的かつ完全に検証された非核化)でなければならないとした。これに対して、北朝鮮は、朝鮮半島の非核化とはアメリカが提供する核の傘、つまり朝鮮半島におけるアメリカによる拡大抑止の消滅をも含むものであるという立場を崩すことはなかった。交渉のゴールが異なる状況で、寧辺の核施設放棄とその対価(制裁の緩和)が、両者間で一致することは極めて困難であったと言えよう。

 ハノイでの会談が決裂に終わった後、南北連絡事務所長会議は7週連続(2019年4月23日現在)で中止され、米朝の「仲介者」としてトランプ大統領との会談に臨んだ文在寅大統領は、特段の収穫もないまま帰国の途についた。北朝鮮もまた、ロシアと首脳会談を行ったものの、今のところ、特筆すべき成果は見えてこない。  制裁に苦しむ北朝鮮の現状は、ハノイ会談において金正恩委員長が「私たちにとって時間は貴重だ」と発言したことからも明らかである。最も避けるべきシナリオは北朝鮮が再び交渉の場から姿を消すことであろう。アメリカは、北朝鮮が求める唯一の交渉相手である。国際社会は、今、交渉が持続的に行われるよう米朝に働きかけることが求められている。