バイデン第46代大統領は就任演説で”Unity”(結束)を7回繰り返し、自分は全ての国民の大統領であることをしつこく強調した。トランプ政権下で深まった人種問題、貧富の差、都市と地方、保守とリベラルの溝の修復を掲げつつ、(1)新型ウイルス対策、(2)気候変動対策、(3)人種問題、(4)経済回復、(5)健康保険制度改革、(6)移民政策、(7)世界でのアメリカの地位回復、を優先課題としてバイデン政権は出発した。
就任の当日ホワイトハウスの執務室で、バイデン大統領は早速17本の大統領令に署名(写真)。トランプ政権の方針を逆転させ、パリ協定に復帰、世界保健機関からの脱退停止、国境フェンスの建設の停止、在留外国人数も国勢調査に含む、など前政権との違いを際立たせたが、最重要大統領令は新型ウイルス対策で、その中では連邦政府の役割を強く打ち出し、前政権のように州任せではなく、国家として対策をリードするという。例えば、国民の政府への信頼を回復するために科学に基づいた対策を進めるとし、ワクチンやその接種情報の透明性を高め、大統領直属の調整役を任命した。
未曾有の危機の数々を背負って出発したバイデン大統領は、執務室の中心に第32代ルーズベルト大統領の大きな肖像画を掲げた。大恐慌の渦中に就任したルーズベルトは巨額の財政出動を使った経済政策「ニューディール」で知られる。ただ、ルーズベルトの政策に倣うためにはバイデン政権は議会との協力が必要だ。
次の政治の山場は2022年11月の中間選挙で、すでにギリギリの多数派である与党民主党の上・下院議席が減る可能性はある(通例、政権党が敗北するのが中間選挙)。ということは22ヶ月でバイデン政権は結果を出す必要がある。さらに民主党の中には、バイデン政権の方針が生ぬるいと批判するサンダーズ上院議員などいわゆる左派勢力がいることも忘れてはならない。
一方、野党に転落した共和党は党内のトランプ勢力の扱いに悩む。トランプ前大統領を上院の弾劾裁判で有罪にすれば共和党は確実に分裂し、無罪とすればトランプ支配が継続するかもしれないというジレンマだ。トランプ前大統領は、「岩盤」と言われる有権者の3割ほどを引き連れて第3党を設立するぞと共和党幹部を脅している。
過激なトランプ熱がさらに継続するのか、それともバイデンの結束の呼びかけがその熱を冷ますのか。アメリカ国民の見識が引き続き問われる政治の季節が継続する。